建築をつくる人たち -建築士 2020.07月号

表紙: 製鉄材をグラインダーでカットする溶接工ブライアン
撮影:Timothy Latim

建築の現場には多くの人が関わる。ひとたび工事が始まれば、どこからともなく仕事を探す人々が寄ってくる。

現場で働く人々のほとんどが日雇い労働者で、仕事を斡旋・紹介するような業者はない。自分で直接現場に売り込みにいくか、これまでの現場で知り合った人から携帯電話を通じて仕事が入るかだ。大工、溶接工やレンガ工、特定の技術を持たず雑務を担当する人、昼間の食事をつくる女性たちまで、およそ日給2ドル〜10ドル(昼食付)という賃金で、毎日朝早くから日没まで現場で働く。地方から出稼ぎに来る人々も多く、母語や宗教も様々だが、現場で共に過ごすうち一人ひとりの性格や生活が垣間見えてくる。

外部照明を現場で試作するブライアン。

現場で出会った印象深い職人の一人が、溶接工のブライアンだ。溶接工と言っても溶接をするだけでなく鉄加工であればなんでもこなす。
街には鉄を加工して家具や門扉をつくる小さな工房があまたあり、彼もカンパラにある工房の一つからたまたま現場に呼ばれてやってきた一人だった。
溶接工の工房は親戚家族で経営をしていることが多く、技術も家族・親戚間で受け継がれている。学校で教育を受けた職人はあまりおらず、英語でのコミュニケーションが難しい場合も多い。彼もまた家族経営の工房で技術を学び、はじめて私たちの現場に現れた時は工房のアシスタントだった。

私たちはそれまでの溶接工たちにうんざりしていた。図面があっても、自分たちの解釈で全く違うものをつくって揉めるとみるや姿を消す。正直どの溶接工も同じだろうという目で見ていた。ところが彼は図面を持ってきて、見慣れないその図面が理解できないことを表明した上で、どうしたいのかを熱心に聞いてきた。英語の話せない職人とのコミュニケーションを助け、次第に私たちのアイディアを代弁するような存在になったのがブライアンだった。
彼はイスラム教徒で、断食時でも食事を取らずに黙々と働く。スチールサッシ、手摺り、照明器具まで、スケッチを描けば大概のものはサンプルを製作し、強度や美しさなど彼なりの提案や意見をくれた。そのおかげで輸入される既製品を求めることなく、ある程度のものは市場で入手可能な製鉄材を組み合わせ、現場で製作できることがわかった。
二つ目の現場であるやま仙(日本食料理店)の工事では、直接彼の携帯電話に電話をかけ、現場に来てもらった。金物、手摺、照明器具など、スケッチのみで彼の意見を聞きながらつくることも多かった。プロジェクトには欠かせないパートナーとなり、今でも鉄を加工したい時には電話一本で駆けつけてくれる。

ものによっては精度の低いものもあり、熟練で高度な技術をもつ職人かと問われれば、
そうではない。しかし彼のように何かを造り出したいと思う職人と建築に携わること自体が、建築をつくる大きな意味のひとつだと感じている。


休憩中の職人たち。やま仙/ Yamasen Japanese Restaurantの現場にて