あきらめから始まるクリエイティビティ -建築士2020.6月号

表紙:工事現場(やま仙/YAMASEN Japanese Restaurant)
設計監理:小林一行+樫村芙実/TERRAIN architects 写真:Timothy Latim
首都カンパラにある日本食レストランの建築現場。大工、メーソン(レンガを積む職人)などが同時に動く

人やモノの流れが当たりまえの生活に慣れると、その流れが滞った途端に不便さや不安を感じる。流通の発達した日本では、食材も建材も人材も、すべて滞りなく流れていることが前提でさまざまなことが計画されるが、ウガンダでは日々何かが滞りながら流れているため、建築現場はいつも予測不能で、スリリングな出来事に溢れている。

これまで私たちが設計・監理を行なってきた現場では、まず「あきらめる」ことを学んだ。設計段階でどれだけ多くを調査し図面に落とし込んでも、現場に材料が運び込まれるのをこの目で確かめ、本当に施工されるまで安心はできない。現場には「計画」という文字はなく、想定していたことは次々と崩れる。誰を責めても事態は好転せず、期待した自分の愚かさを認めるしかない。まずあきらめ、それから本当に実現可能なアイディアを練り直すこと、それが唯一私たちにできることだった。

特に、建築の材料や器具の選択は難しく、予測がつかない。製鉄材や樹脂系の既製品をはじめ、衛生・照明器具などは、国内生産品がほとんどないことも一つの原因だ。販売代理店から営業担当が売り込みにくるようなこともあるが、いざ使おうとすると「在庫がないので納品は1ヶ月後になる」と言われ、1ヶ月待つと「あともう1ヶ月」というようなやりとりは日常茶飯事である。釘やボルトひとつをとっても、同じ仕様のものを入手するのは容易ではない。工事の途中で在庫がなくなり、街中を探し回らなければいけないことも多々ある。

当初は期待も大きい分、ダメージも大きかった。しかし、「あきらめ」は、工夫のはじまりである。「モノ」が手に入らないのであれば一からつくれば良い!幸い現地の大工や溶接工たちは、スケッチや模型で新たなアイディアを示すと、その辺りにある素材で工夫しながらつくって見せてくれる。打率は低く、精度も高いとは言えないが、時に私たちの期待をはるかに凌ぐモノをつくりだしてくれる時がある。「モノがない」という状況が生み出すクリエイティビティだ。

計画してつくることがうまくいかなくなった時、それは思考し、より良いアイディアを練る絶好のチャンスだとも言える。言わずもがな建築は「モノ」の集積である。その「モノ」がどうのようにつくられ、なぜそこにあるのか。予測不能な状況が、考えたこともなかった出自に目を向けさせ、そのことを考えさせるきっかけを与えてくれている。

街中にある釘やボルト、工具を売る商店