うごめくコンテクスト・躍動する建築のテロワール 2020.1

Original Text (English)

「2003年のアフリカ」

アフリカ、ウガンダ共和国、と聞いて情景が浮かぶ読者の方はどれだけいるのだろう。私が2003年に初めて足を踏み入れようとした際、大学2年生だった私は建築学科の先生に「そこに建築はあるのか?」と聞かれた。そう聞かれて、人がいるなら建築はあるはずとは思ったものの、そこにどんな「建築」があるのか私にもわからなかった。日本で得られる情報は限られていて、アフリカは大きく遠かったが、それは当時日本に住む多くの人々にとっても同じだったのではないかと思う。

2003年当時、国の人口は約2千万人程度だったのが、現在はその2倍の四千万人を超える。首都カンパラにおいて近年の増加率は約4%/年と言われ、世界の中でも最も急速に人口が増えている都市のひとつだ。その数字は現地にいれば実感を持って感じることができ、あらゆる場所に人が溢れていて、湧き上がるようなエネルギーを感じる。この勢いそのままに、2050年には国の総人口が1億人を超えると言われている。人口減少、少子高齢化社会をどう建築、都市が受け入れるのかが議論される日本とのコントラストは激しく、インフラの未整備などの問題を抱えながらも、目まぐるしく更新されるテクノロジーとともに人々が生活する環境は激しくうごめき、変化している。
東アフリカの内陸に位置し、国土は日本の本州大。南部にアフリカ最大のヴィクトリア湖を抱え、赤道直下でありながら首都近郊は標高約1.2kmと高いため、日射しは強いが平均気温が30℃を超えることはなく、爽やかで過ごしやすい。
1962年に英国より独立し、内戦などの混乱を経たあと1986年より現大統領が就任し、様々な課題を抱えながらも大きな戦乱なく安定した経済成長を遂げている。

東京からの距離は11,500キロメートル。昨今、日本のメディアにも取り上げられる機会が多くなったが、まだまだ物理的にも心理的にも遠いアフリカの一国だ。だが、約15年の関わりの中で、そこに住む人々の人柄や文化の中には共通点も見えてきた。それは、西洋の影響を大きく受けたのち、独自の文化や歴史、アイデンティティと対峙しながら変化を続ける姿に、生まれ育った日本とを重ねて見ているからなのかもしれない。巨大な大陸の一国ウガンダの今をみつめることで、「発展」の「途上」にある一つの国の事例としてではなく、同じ時代を生きる私たちが建築や都市について考えるヒントが見いだせるのではないかと考えている。