アフリカン モダニズム 1 -建築士2020.10月号

Original Text (English)

表紙:カンパラセレナ国際会議場

1950年から60年代にかけて、サブサハラ以南のアフリカ諸国の多くが独立を果たした。特に多くの国が一斉に独立を宣言した1960年を「アフリカの年」としてご存知の方も多いかもしれない。しかし、この時代にどんな建築がアフリカで建てられてきたかは広く知られてこなかった。ドイツ人建築家のマニュエル・ヘルツ(ManuelHerz)は、ガーナ・セネガル・コートジボアール・ケニア・ザンビア5カ国の主要なモダニズム建築を著書「AFRICAN MODERNISM」でまとめ、こう記している。「これらの建築が1960-70年代の世界を代表する作品の一例であるにも関わらず注目を浴びることはなかった。そして今尚、発見されるべき名作が残っている。」(筆者訳)

国会議事堂・中央銀行・スタジアム・会議場・大学などを中心に、モダンで希望に満ちた未来を感じさせる大胆な表現が求められていたことに彼は注目し、この時代の建築を紐解いていくことが国の脱植民地化(decolonization)のプロセスを明らかにすることにつながるのではないか、と投げかける。建築は独立を果たした国の多くで若い国家のアイデンティティを表現する重要な手段となったはずであるからだ。

ウガンダも他国と足並みを揃えるように1962年10月9日に独立を果たした。ヨーロッパから持ち込まれた技術や工法を多用し、独立後の新しい建築をつくろうという大規模なプロジェクトが動いていたことが、当時の首都カンパラで撮影された写真などから読み取れる。しかし、1971年から79年にかけてイディ・アミンの名を世界的に広めた政治的大混乱を経験し、この時期に建築家や技術者をはじめ多くの外国人が国を去ることとなった。それと共に図面等の資料も多くが破棄され、設計者や施工者、どのような経緯で建設されたかなどの詳細が不明となってしまった建築も多い。

国立劇場(National Theatre)

現在、マニュエル・ヘルツの著書をきっかけに、カンパラにあるモダニズム建築についても見直そうという動きがある。ドリーン・アデンゴ(Doreen Adengo)は米国で教育を受け帰国したウガンダ人建築家で、彼女はカンパラにある良質なモダニズム建築の所在地を示すマップを作成し、ツアーを企画・運営している。ツアーに参加しエピソードを聞きながら改めてそれらの建築をじっくり眺めてみると、コンクリート・鉄・ガラスという素材自体を素直に用いながらも、熱帯の気候への対処や、内部・外部空間の繋がりに対して工夫が凝らされ、「らしさ」を探求していることに気づく。近年カンパラにも乱立する無個性なガラス張りの建築(彼女は「ドバイズム建築」と呼んでいる)とは対照的であり、まずはツアーによって存在を広く認知させ、ゆくゆくは保存へという重要な運動が始まっている。

約半世紀の間、時代とともに用途やオーナーを変えながらも、この土地特有の変化を遂げてきた世界がまだ知らぬ名作たち。これからこの地で何がつくられるべきか?あるいはつくられざるべきか?私たちに示唆しているように感じる。

Kampala Modern Architecture Map (提供:Adengo Architecture)