暮らしと移動 -建築士 2020.3月号

首都カンパラは国の南部に位置し、中心部より北部・東西方向へ放射線上に舗装された幹線道路が伸びている。人やモノの移動を担うのは主に自動車で、その多くは日本の中古車である。内陸国であるため、国外・アフリカ大陸外からのモノの多くは、南西部に位置するエンテベ空港に空輸されるか、または隣国のケニア・タンザニアなどの港を通じて、まずカンパラに運び込まれる。その後、中心部にあるタクシーパークから、幹線道路上に点在する各地方都市や小さな商業エリアへ運ばれる。食料、建材あらゆるものが人とともに、これらの道路を通じて各地域と首都カンパラを行き来しているのだ。

幹線道路沿いの停留所。周辺は商店が並ぶ商業エリア。

路上にはトヨタのハイエースを転用した乗り合いバス/タクシー(マタツと呼ばれる)とホンダのスーパーカブなどの後部に客用クッションをつけたバイクタクシー(ボダボダと呼ばれる)が縦横無尽に走っており、人やモノのみならず鶏などの家畜(時にはヤギも)がこれらの手段によって移動する。地方の商業エリアでは、幹線道路沿いに顔を向けるいくつもの商店が隣りあい、隙間無く並ぶかたちで存在している。そのような賑わいの場所に(明確な「停留所」としては整備されていないので初心者には分かりにくいが)地域の名前がついた場所(ステージと呼ばれる)があり、乗り合いバスが停車する。そこで人が降り、荷物を降ろし、また乗り込む。

商業エリアで買い物をする風景。

ここ10年の急激な人口増加に伴って、車の数も増え、移動や流通が目に見えて激しくなった。商業エリアを中心に街も広がりをみせており、かつては小さな商店しかなかった地域の道路沿いにも高層のショッピングモールが建ち始めるなど、ウガンダ流の「駅前開発」が進む。(著者がかつて住み、現在も活動の点となっているカンパラ中心部から30分ほどの地域は、ベッドタウンとしての需要が増し、地価の上昇など変化が著しい。)

だが、幹線道路から一歩外れて中へ入るとすぐ、舗装されずのままの路地が残る。ヤギや鶏がどこからともなく飛び出し、子どもたちが走りまわる路地には、ミシン仕事や料理をする女性の様子もみられる。変化の激しいものと変わらぬものが同居し、一見混沌とした環境だが、人々は軽やかに順応しているようにもみえる。道ができ、家が建ち、店ができ、街ができる。人やモノの移動とともに、それらが日々変化し、それが彼らにとっての日常生活であるというあたりまえのことを思い出させてくれる。

一歩入った路地から幹線道路をみる。(写真:すべて小林一行)